初めに.
サーキュラーエコノミーの現状を感じる
日本でもSDGs、持続可能、サスティナビリティという言葉をよく耳にするようになりました。
大切な取り組みとは理解していても、
日常生活に反映出来ているかというと、まだ現実的ではない人も多いのではないでしょうか。
日本ではSDGsとして取り組まれている活動は、
海外ではサーキュラーエコノミーとして企業や個人での取り組みが活発になっております。
今回は企業と個人がどの様にしてサーキュラーエコノミーに取り組んでいるか、日本企業がどのようにして取り組むべきなのかのヒント感じるために現地に行って体験したことを記事にしました。
サーキュラーエコノミーとは
世界でサスティナビリティ・脱炭素の関心が高まるなか、サーキュラーエコノミー(Circular Economy)という言葉に注目が集まっています。
日本では「循環型経済」と訳され、
通常「ゴミ」とされるものを「資源」と捉え、廃棄を出さない経済循環の仕組みのことを意味しています。
サーキュラーエコノミーの市場規模は2023年までに4.5兆米ドル、50年25兆ドル、日本国内では30年80兆円、50年120兆円の市場規模になると算出されています。
直下型から循環型経済へ
サーキュラーエコノミーのメリットは?
廃棄物処理にかかるコストやリスクも軽減されるうえ、新たなビジネス機会や雇用の創出を促し、経済の活性化にも寄与することができるとされています。
・Reduce(リデュース):ごみの発生を抑制した製品づくりをする
・Reuse(リユース):同じものを繰り返し利用する
・Recycle(リサイクル):廃棄物を資源として再活用する
・Repair(リペア):修理して利用する
サーキュラーエコノミー大国 “オランダ”
オランダが目指す循環型社会
オランダでは、2050年までに廃棄物のない完全な循環型経済をオランダ国内で実現すると国策として宣言。
特に「2030年までに原材料の使用量を50%削減する」「廃棄物のない社会を目指す」という項目は、ありとあらゆる社会組織を巻き込んだ取り組みへと発展することが予想され各国が注目をしています。
現地で観るサーキュラーエコノミー
The New Farm
オランダのハーグにあるThe NewFarmは元々通信系の会社が保有していた工場跡地に55社以上のサスティナブル企業がオフィスを構えるサスティナブルオフィスビルになっています。
ここではオフィスを構える場合の条件があり、
・取り組んでいる事業や商品がソーシャルインパクトを与えるか、
・オーガニックを中心とした製品作りに取り組んでいるか、
・健常者/障害者の雇用創出の取り組みがみられるか、
・サスティナブルな取り組みを事業や商品に取り込めているか。など、
入居する企業の取り組みによって入居の有無が決まるとオフィスのコミュニティマネージャーは語ってくれました。
オフィスは開けた環境で、伸び伸びと働く人が多いことが印象的
オフィスの外から眺めるハーグの街にはソーラーパネルがついた建物も多い
オフィスに入居する企業
オーガニックビールを製造・販売する“EIBER BIER”
オフィスの中で製造から販売、マーケティングまでの一環してオフィスで行っています。
製品に利用する水については循環型の技術を採用していました。
廃棄素材を活用してソックスを製造するbrada.
アップサイクル(捨てられてしまうものに再び手を加えて、新たな製品として生まれ変わらせる)商品を国内を中心に販売しています。
現地のスタッフと話して印象に残ったのは、
「コストだけを重視して海外製造することは、国としては雇用や技術など多くのことを失っている」というスタッフの言葉だった。
皮ひとつ捨てるもはない着想から、商品加工をする製造メーカー「YESPERS」製品と製造、雇用が密接に関わっていることも特徴的で、原材料を地元で処理し、残留流を防ぐことで、設置面積の削減と雇用の増加を組み合わせています。「YESPERS」
その他にも、
オーガニックに特化した食品コンサルティング会社、オーガニック化粧メーカー、水力発電会社、社会活動会社、オーガニック食品会社、マテリアル会社、廃材から家具を作る会社など、The NewFarmのコンセプトに賛同した企業が多く見受けられる。
また、オフィスを歩いていると平日11時頃にも関わらず全く人がいないオフィスもあれば、オフィスの広さに対して人数がまばらだったりすることもある。
理由を尋ねてみると、製造業では繁忙期に合わせて稼働を多くする場合や、ダブルワークを軸にした雇用、リモートワークとの並行などライフスタイルや時期に合わせて働いている人も多いそうだ。
街で感じるサーキュラーエコノミー
地下収納のゴミ捨て場
アムステルの街を歩いて最初に目に付くのはゴミ捨て場の量
全てが地下に収納される仕組みになっていて、
時間や曜日が限定されておらず用途に合わせてゴミを捨てることができます。
紙類とビン類は別に回収するが、可燃物 の中にカンもガラスも一緒に捨てることができる。
また、家庭から出る飲料や食料品の缶詰など金属包装のリサイクル率は2016年時点で94%とのこと。
移民や多国籍な人が多く住む国としては、ゴミの分別に悩むこともなくなると感じる。
デポジット式のペットボトルと空缶
スーパーマーケットに行くと目につくのが袋いっぱいに、缶・ペットボトル・瓶を回収ボックスに入れる人の姿。時には列になっている。
これは商品金額の他にペットボトル、缶、瓶の費用がデポジットされており、返却すると10¢〜25¢が戻ってくる仕組みになっている。
リサイクルボックスはお店の入り口に設置されており、返却した際にスーパーの割引券として返ってくる仕組みになっている。
製品への還元
商品タグを見るとリサイクルから製造されている商品も多く、製造方法が環境に配慮されていることも特徴的
Lynk&co
中華人民共和国の浙江吉利控股集団(吉利)と、その傘下であるスウェーデンのボルボの共同出資により設立された高級車ブランドLynk&coのショールーム
ショールームには車は1台しか展示されておらず、環境に配慮された商品が並ぶ
車を見せるショールームというよりは、サーキュラーエコノミーやオーガニックを重要視した商品を取り扱うセレクトショップのようになっており、奥に続く廊下を進むと商談ルームになっている。
接客もとてもフランクで、車を売るというより、ライフスタイルや価値観を重要視したブランドデザインは新しい発見だった。
De Ceuvel(デ・クベール)
アムステルダムのノールト地区(北区)にあるデ・クベール。
造船所の跡地を使用し、この施設はアップサイクルされた14隻の陸揚げされたハウスボートからなるエリアにオフィス、カフェ、イベントスペース、研究ラボ、スタートアップオフィスが入居するクリエイティブ・ビレッジになっている。
アムステルダム市が10年間の土地利用コンペを2012年に実施した特別区になっており、各ボートにソーラーパネルやコンポストトイレが設置され、循環型をテーマにした取り組みが見受けられる。
主典
カフェエリアは環境客と地元人の活気に溢れ、1つのコミュニティの場として地元に根付いているエリアになっていた。
食を通じたサーキュラーエコノミー
プラカップの規制
2023年7月1日以降で、オランダでは持ち帰りやデリバリーで使用する使い捨てプラカップや食品包装の代金を顧客が支払うことが義務付けられた。
提供されるカップなどは再利用可能な代替品で商品を提供をしており、
店内で提供されるストローも紙や竹製品を利用している店舗が多い。
食品も過度な包装をしないお店が多く、規制後の店舗対応も進んでいることを感じる。
Billie
プラカップ規制をビジネスに転換しているベンチャー企業“Billie”
商品価格にカップが代1€デポジットされており、返却すると1€が返ってくる仕組みになっている。デルフト大学ではコイン制が導入されカップを返却するとコインが戻ってくる仕組みになっていた。
街中のカフェでもBillieのサービスを利用している店舗も見受けられた。
Albert Heijn (アルバートハイン) と ヴィーガン
現地の人と話していると、オランダ人は節約家が多く物を大切に扱う人が多いと言う。
オランダ市内を歩いていると多く見かけるスーパー(アルバートハイン)では、
廃棄予定の商品や形が不揃いの商品を購入できるサービス(アプリ)あり、ユーザーが日常的に利用している。
また、スーパーやレストランはびっくりするほどに、ヴィーガン製品の品揃えが豊富で専門店や大手ファーストフード店のメニューにもヴィーガン製品が当たり前のようにある。
日本のベジミート(代替肉)との味と比べて、肉と何ら遜色ない味でベジミートを食べると言う感覚がなくなるほどの美味しさである。
Mediamatic ETEN
こちらのオーガニックレストランMediam ETENの循環型の取り組みも非常に面白い。
コロナ禍では「隔離温室」でも注目を浴びたレストランだ。レストランの敷地では水耕農園や生け簀があり、その中で水を循環させながらオーガニック栽培・飼育されており、ハーブやキノコ、白身魚や鶏など多くの生き物がいる。
レストランは完全予約制になっており、ラボスペースやアーティストとのコラボイベント、展示なども頻繁に開催されいる。
関係者は、
今後はレストラン内での収穫量を増やすことで食品を搬送する際のCO2を減らしたり、海水から真水を作るなど、色々な取り組みにチャレンジしていると語ってくれた。
最後に、
今回、現地で会ったベンチャー企業や学生起業家と話しをしていると、
当たり前のように事業やサービスの根幹部分にサーキュラーエコノミーや持続可能な取り組みが事業の軸になっていることにも驚きを感じた。
太陽光パネルの再利用、家具の再利用・リペア専門店、サーキュラリティを可視化するデジタルトーク,,,など現在の環境問題に関する課題からサーキュラービジネスに転換した事業構造になっている。
国土も人口規模も決して大きくない(九州と同じ面積)オランダが、世界のサーキュラーエコノミーを先陣を切っていく理由には、海面より低いところにあり度々洪水に見舞われた経緯もあり、地球規模での環境問題は地域が運命共同体であるという考えも納得ができる。
今回の視察を通じて、
地球規模の課題を解決する取り組み(ソーシャルビジネス)の重要性を改めて感じた。
今後の日本でも、地球環境を良くする為のサーキュラーエコノミー型のビジネスモデルが
「便利だから買う」から「便利だし環境に良いから買う」
「とりあえず買う」から「捨てた後でも再利用できるから買う」など、、、
経済的利益も含めた取り組みが、
企業と消費者が連動した購買行動が活発になっていくことが予想される。
我々、マーケティング会社も、環境ブームを作り出すのではなくビジネスのコアになる活動を後押ししながら、世界の動向をいち早くインプットしてビジネスに還元できるように努めたいと改めて感じるサーキュラーエコノミーの視察になった。
1989年、東京都足立区出身。
2009年にデジタルマーケティング会社を創業し、約10年間マーケを中心に活動。マーケの現場では、最先端の動画やSNSのクリエイティブを武器にしたクライアントワークで多種多様な企業の売上アップに貢献。
2019年2月、株式会社toを設立。